高速道路と社会福祉が連携した「高福連携」で新たな可能性を探る

北海道岩見沢市

地域に根差し、誰でも自然と笑顔になれる「クピド・フェア」

社会福祉法人クピド・フェア 施設長 佐野 史典 様の写真1
社会福祉法人クピド・フェア 施設長
佐野 史典 様

 石狩平野の中央部、札幌と旭川の間にある岩見沢市。豪雪地帯として有名なこの地に、自立をテーマに障がい者・高齢者の方々の生活と就労を支援している「社会福祉法人クピド・フェア」がある。

 設立は、昭和41年。「岩見沢緑成園」という名で開所された同施設は、30周年を迎えた平成8年に「天使が集う、愛のあふれる広場」を意味する「クピド・フェア」に名称変更された。

 クピド・フェアは、障がい者支援施設や特別養護老人ホームをはじめ、障がい福祉サービス事業所、障がい者グループホーム、デイサービスセンター、居宅介護支援事業所などの福祉施設を幅広く運営している。また30周年記念事業としてつくられた自然豊かな憩いの場である「クピドの森」や、ビュッフェスタイルの料理が人気のレストラン、焙煎から行っているコーヒーを楽しめるカフェのほか、一般的なクリーニング店、診療所、売店、郵便局などもある。さながら施設そのものが小さな街のように構成されているのが大きな特徴だ。そのため、気軽に足を運ぶ地元住民の姿も多く見受けられ、利用者と地域住民の交流の場にもなっている。

就労支援を通して障がい者の精神的充実や社会貢献を後押し

 同施設は、障がい者や高齢者が仕事を通じて精神的な充実や社会貢献することを目的に、オーダーメイドの車いすの製造開発や、ISO基準に則ったミニチュアベアリング製造などの精密機器の製造・組立、ホームページ制作やペーパークラフト設計などを手掛けるIT事業、LEDを使ったレタス栽培やコーヒー・パンの販売等の食事業など、4つの事業を中心に運営。多職種に対応した仕事環境の下、それぞれの機能状態や適性に合った業務を約140名の障がい者の方々が意欲的にこなしている。

 「どの利用者さんも目を輝かせ、生き生きと働いている姿が印象的です」と話すのは、クピド・フェアで生活課長を務めている佐野史典さん。利用者の話をするとき、暖かな笑顔を携えている姿からもクピド・フェアの目指している姿勢が見て取れる。

 この施設では、利用者も職員も元気よく挨拶を交わしている。そして施設の隅々まで掃除が行き届き、自然と清々しい気持ちになる。「私たちは誰もが平等で、そこに障がいの有無は関係ありません。ですから、ここに訪れた方が気持ち良く過ごせるよう、利用者さんも職員も元気よく挨拶すること、そして施設をきれいに使うことを20年以上前から行っています」。押しつけではないクピド・フェアの考えに利用者の方も共感しているからこそ、活気にあふれた施設として地域からも愛されている。

高速道路と福祉が連携した岩見沢市初となる「高福連携」がスタート

 そんなクピド・フェアとNEXCO東日本が出会ったのは、平成31年の3月のことだ。以前よりNEXCO東日本グループでは、地域社会の活性化を目的に高速道路と福祉団体が連携した取り組み「高福連携」を行ってきた。その一環としてSAやICが置かれている岩見沢でも福祉団体との連携に取り組むことになった際、パートナーとしてクピド・フェアに白羽の矢が立った。「ちょうど商品の販売先を広げたいと思っていたタイミングで話をいただいたため、皆で協力してやっていこうととても嬉しく思いました」と、佐野さんは当時を振り返る。

 最初に行われたのは、道央自動車道と道東自動車道のSA・PAにあるミニガーデン「北海道ハイウェイガーデン」のうち、岩見沢SAのハイウェイガーデン整備だ。

 クピド・フェアの敷地内には園芸療法として活用している花専用のビニールハウスがあり、利用者はさまざまな種類の花を愛情込めて育てている。そのなかからマリーゴールドやパンジーなど300株の花をNEXCO東日本が購入し、岩見沢SAのハイウェイガーデンに植栽。高速道路の玄関口である岩見沢ICの料金所付近の花壇にも色とりどりの花を植えており、これらは高速道路を利用する方を優しく迎え入れる役割を果たしている。また、SA・ICの植栽作業もクピド・フェアの障がい者の方々にお願いすることで、障がい者就労機会の拡大にもつなげている。佐野さんは、「高速道路のお客さまにはきれいな花を見て楽しんでいただき、NEXCO東日本さんにも喜んでもらえ、障がい者の皆さんのやりがいにもつながる。まさに三方よしの素敵な取り組みになりました」と語っている。

 続く高福連携第二弾としては、本来は廃棄予定であった岩見沢SA内のハイウェイガーデンの摘み花を、障がい者の皆さんの手によって交通安全を願う「押し花のお守り」に加工し、岩見沢SAで行われたイベントにて販売すること。そのかわいらしい見た目と丁寧な仕上がりに、多くのイベント来場者から好評を博している。

 また最近では、NEXCO東日本が運営する地方の名物品・お土産を販売するオンラインショップ「ドラぷらショッピング」で、クピド・フェアオリジナルの9種類の味が楽しめるコーヒーセットや、自慢のラスクとコーヒーの詰め合わせギフトを販売するなど、クピド・フェアならではの新たな高福連携にも取り組んでいる。

決して焦ることなく、地に足をつけた高福連携を今後も続けていきたい

 クピド・フェアでは、すべての人が差別されることなくお互いを大切にし、皆が笑顔で暮らせる施設・社会の実現を目標に、障がい者や高齢者の生活・就労・自立の支援を行ってきた。また法人全体で地球に優しい環境づくりの一環として、桜の苗木などの植樹やレジ袋削減などにも取り組んでいる。そうした取り組みは、SDGsの掲げる目標のうち、「すべての人に健康と福祉を」、「人や国の不平等をなくそう」、「働きがいも経済成長も」、「気候変動に具体的な対策を」、「陸の豊かさも守ろう」などを如実に体現している。こうした持続可能な社会に大きく貢献する取り組みは、障がい者や高齢者の社会進出をこれまで以上に促進し、高福連携のさらなる充実にもつながる。

 佐野さんは、「高福連携は初めての経験だったため、いろいろと試行錯誤の繰り返しでした。しかし、クピド・フェアの花が多くの高速道路のお客さまに笑顔を届けていること、そしてそれを知った障がい者の皆さんの嬉しそうな姿を見て、改めて高福連携に関われたことを幸せに思っています。これからも急ぎすぎることなく、一つひとつ丁寧な高福連携を継続していければいいですね」と、高福連携への今後の期待について熱く話してくれた。「高速道路×福祉施設」という、異色の組み合わせとも言えるNEXCO東日本とクピド・フェアが指す次の一手に、今注目が集まっている。

クピド・フェア生活課長・佐野史典さんの写真2
クピド・フェア生活課長・佐野史典さん
精密部品の組み立て作業の写真
精密部品の組み立て作業
「ドラぷらショッピング」で販売されているオリジナルのラスクとコーヒーの詰め合わせギフトの写真
「ドラぷらショッピング」で販売されているオリジナルのラスクとコーヒーの詰め合わせギフト
クピド・フェアの佐野さんと打ち合わせをする北海道支社の皆さん(左から、白石さん、梅津さん、佐野さん、和田さん)の写真
クピド・フェアの佐野さんと打ち合わせをする北海道支社の皆さん
(左から、白石さん、梅津さん、佐野さん、和田さん)