「南房総観光復興パートナーシップ」によるNEXCO東日本との「つながり」が観光復興の支えに

千葉県館山市

豊かな自然に、農水産物。アクセスの良さが人気の館山市

千葉県館山市役所 観光みなと課 観光企画プロモーション係 矢代 誠 様の写真
千葉県館山市役所 観光みなと課 観光企画プロモーション係
矢代 誠 様

 千葉県南部に位置する館山市。東と南を太平洋、西を東京湾と海に囲まれているこの街では、「水揚げされる魚種の豊富さが自慢です」と、館山市観光みなと課観光企画プロモーション係の矢代誠さんは語る。「鮨のまち」と呼ばれることがあるほど市内に多くの寿司店が点在し、なめろう、さんが焼きといった魚介をつかった郷土料理も有名だ。ご当地グルメである“館山炙り海鮮丼”は、8年間で11万食以上を売り上げている。
 館山市の基幹となる産業は、第三次産業である観光・サービス業だ。豊かな農水産物やレジャーを求めて、各地から観光客が集まる。観光入込み客数は年間約200万人。そのうち、車でのアクセスは7割にものぼるという。「東京から1時間半〜2時間もあれば到着し、リゾート気分を楽しめるのが館山。思い立ったら吉日と、日帰りで遊びにいらっしゃる方も多いのではないか」と分析する。

館山市観光みなと課観光企画プロモーション係の矢代誠さんの写真1
館山市観光みなと課観光企画プロモーション係の矢代誠さんの写真2

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  • 館山市観光みなと課観光企画プロモーション係の矢代誠さん

東京湾アクアラインの開通で、観光客数が増加

 東京湾アクアラインができるまで、館山市をはじめとする南房総地域は宿泊必須のリゾート地だった。しかし、高速道路が開通してからは、徐々に日帰りの観光客が増加した。現在では「高速道路がないと困りますね」というほど、アクセスの良さが館山市の売りの一つになっている。
 交流拠点施設である「“渚の駅”たてやま」も、連日多くの人で賑う。施設には、館山湾を再現した巨大水槽や、「さかなクンギャラリー」を有する博物館のほか、長さ500メートルの「館山夕日桟橋」がある。桟橋形式としては日本最長であり、高速ジェット船や大型客船も泊まるこの場所は、観光客だけでなく市民の憩いの場所だ。「館山ファミリーパーク」、「道の駅 南房パラダイス」といったレジャースポットもあり、遊ぶ場所には事欠かない。海や花といった自然だけでなく、歴史を楽しむこともできる。戦国武将里見氏の居城を整備した公園にある「館山城」は、全国で唯一、曲亭馬琴の南総里見八犬伝の資料がそろう施設で、土日祝日は、駐車場から山頂までをシャトルカーが走り、観光客を運んでいる。「観る」だけでなく、ご当地グルメを「食べる」、歴史を「知る」、果物狩りやサイクリングを「する」と、様々な体験ができることが館山市の観光の大きな魅力だ。

「“渚の駅”たてやま」の写真
日本最長の「館山夕日桟橋」の写真
さかなクンが名誉駅長を務める博物館の「さかなクンギャラリー」の写真

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  • 「“渚の駅”たてやま」
  • 日本最長の「館山夕日桟橋」
  • さかなクンが名誉駅長を務める博物館の「さかなクンギャラリー」

「本当に頼もしい存在」。高速道路の素早い復旧が、台風被災時の大きな支えに

 観光のためになくてはならない高速道路。矢代さんが、その頼もしさを改めて強く感じたのは、台風による被害を受けたときだったという。令和1年9月と10月、相次いで房総半島を襲った台風15号、19号。風害、水害、そして塩害。強風によって多くの家屋の屋根が飛び、もうすぐ旬を迎えるはずだったイチジクの実は塩で焼けた。
 しかし、物流が止まらなかったことが、館山市の大きな支えとなった。高速道路は、一時通行止めになった箇所もあったが、すぐに復旧。飲食物やモバイル用バッテリーといった支援物資のほか、作業に必要な軍手やブルーシートなどの備品がぞくぞく届いた。「もし、高速道路がなかったら、復旧復興は今のペースでは進まなかったかもしれません」と、当時の状況を振り返る。実際、台風のあとは倒木が多く、下道は塞がっている状態だった。そういったなかでも、迅速に復旧した高速道路のおかげで、陸の道がつながった。
 また、NEXCO東日本の対応により、ボランティアの高速道路の通行が無償になったことも大きかった。「ボランティアの方に来ていただけなかったら、半年経った今でも、市役所職員もまだ屋根に上って作業していたでしょうね」と矢代さんは笑う。被災後、最も必要としていた人手は、高速道路を利用して集まり、館山市をはじめとする南房総地域の素早い復旧を支えた。

パートナーシップ締結。NEXCO東日本とともに観光復興に向けてPR活動を開始

 復旧が進むなか、矢代さんは次第に「被害を受けた複数の自治体で一緒にPR活動したい」という思いを持つようになった。しかし、台風被害の補填のために予算の多くを使ってしまっていたため、なかなか身動きがとれずにいたという。そんなとき、NEXCO東日本との観光復興の話が持ち上がった。「災害により甚大な被害を受けた南房総地域の観光復興を一緒にやりましょう」。
 そして、令和2年1月21日(火)に「南房総観光復興パートナーシップ」を締結。館山市を含む4市1町とNEXCO東日本は、復興にむけてともに動き始めた。

 パートナーシップの締結に先駆け、令和1年11月には東北自動車道の蓮田サービスエリア(上り線)においてPRイベントが行われた。南房総のブースは大盛況。パンフレットとノベルティのセットは多くの人の手に渡り、観光復興の兆しを感じた。本来なら料金がかかるパンフレットの掲出が無料になり、関東の管内のサービスエリア、パーキングエリアのほとんどにパンフレットを置くことができたことも復興に役立った。これにより、より広い範囲の利用者に、南房総の魅力をPRすることが可能になったからだ。一都六県の高速道路を管理しているNEXCO東日本の強みが生きた形だ。
 ほかにも、ドラ割として「南房総観光応援フリーパス」が発行された。対象期間内の連続する最大2日間、千葉県南房総エリアの高速道路が定額で乗り降り自由になったことも手伝い、被災後の館山の客足は徐々に戻りつつある。
 この南房総観光復興パートナーシップは6月末までを予定している。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、2月22日に行われるはずだった幕張でのイベントが中止になるなど、思うようにPRができていない部分もある。矢代さんは、今後もまた一緒にイベントができたら、と未来に目を向ける。

NEXCO東日本との「つながり」を生かして。館山市の発展に力を入れる

 矢代さんが所属する部署では、館山市のさらなる発展を目指しながら、SDGsを意識した取り組みにも力を入れている。農水産物のブランド化の推進では、「館山を盛り上げよう」という思いで集まった人々と「新ご当地グルメ推進協議会」を起ち上げ、“館山炙り海鮮丼”や“伊勢海老ステーキ御膳”などの人気商品を生み出した。また、マリンレジャーを活用した観光振興では、ウミホタル観察会を定期的に開催。海水浴場開設期間中には新たな条例を設定し、海岸利用者のマナー向上を呼びかける。海に囲まれた館山市ならではの魅力をアピールすることで集客を増やし、「働きがいも経済成長も」目指したいという考えだ。
 「住みたい田舎ランキング」で1位をとったころから、移住の相談も毎年増加傾向にある。自然豊かな町で、ゆったりと老後を過ごしたいという年配の方が多いが、なかには館山市の観光地としてのポテンシャルに魅力を感じて移り住む若者もいる。彼らはカフェを開いたり、新規就農しこだわって育てた農作物を東京で販売したり、それぞれの働きがいを見つけながら、館山での暮らしを楽しんでいる。
 館山市の今後の発展を考えるなかで「NEXCO東日本さんとの関係はさらに重要になってくると思います」と、最後に矢代さんは語った。そして、被災後のパートナーシップによってできた良い関係を大切に、蓮田サービスエリアで行ったようなPRイベントを通じて、これからも未来に種をまく活動に力をいれていけたら、と願う。一つの市で行う点でのアピールではなく、一都六県の高速道路を管理するNEXCO東日本とだからこそできる、面でのPR活動に大きな期待を寄せている。

矢代さん(遠くに伊豆大島も遠望できる「“渚の駅”たてやま」屋上にて)の写真

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  • 矢代さん(遠くに伊豆大島も遠望できる「“渚の駅”たてやま」屋上にて)