「釜利谷地区における自然環境との調和に向けて」

平成18年3月30日
東日本高速道路株式会社
横浜工事事務所

 横浜環状南線(以下、「横環南」)は、横浜市中心部に集中する交通を分散し、市内の慢性的な交通渋滞を緩和すること等を目的に計画されている横浜環状道路の南側の一部(横浜市金沢区釜利谷(かまりや)町から同市戸塚区汲沢(ぐみざわ)町までの延長約9km)をなす自動車専用道路であり、平成7年に都市計画決定されました。

 釜利谷地区は横浜市内でも比較的自然環境がまとまりをもっている地域であり、ヒメウキガヤ(神奈川県の絶滅危惧種)やホトケドジョウ(環境省レッドデータブックの絶滅危惧IB類)等の生育・生息が確認されています。

 このようなことから東日本高速道路株式会社では、自然環境の保全・復元・創出を基本方針として、横環南事業を進めており、釜利谷地区の自然環境との調和に向けて調査・検討を進めてきたところです。

 平成8年から、「横環南自然環境検討委員会」(委員長:亀山章 東京農工大学農学部教授)を設置して専門家等による調査・検討、ヒメウキガヤの一部移植実験等の調査・検討に取り組んでいます。また、平成12年には、調査・検討の内容を事業者として適宜具体化していくための「釜利谷地区自然環境保全・管理基本計画」を作成し、横環南の工事等に反映させてまいりました。

 平成13年1月及び平成16年3月に行った記者発表では,ヒメウキガヤの一部移植実験におけるこれまでの調査によって、「ひょうたん池」とその代替池として整備した「新ひょうたん池」について、水質・水量、水生動物の生息状況等からほぼ同質な環境が形成されていること、ヒメウキガヤの生育についても良好であることを報告しています。

 その後、「新ひょうたん池」において調査を継続しており、現在、ヒメウキガヤが良好な生育であることを確認しております。また、水生動物の生息状況等からもほぼ同質な環境が維持されていることを確認しております。

新ひょうたん池「ヒメウキガヤ」の生育状況

 新ひょうたん池のヒメウキガヤは平成11年3月に一部移植実験を行っています。
平成17年5月時点では,下記の写真のように順調な生育をしております。

「ヒメウキガヤの生育状況」(平成17年5月撮影)

ヒメウキガヤのイメージ画像
ヒメウキガヤ

ヒメウキガヤ(イネ科ドジョウツナギ属)
北海道と本州の河川の上~中流域,水路,水田などの水辺や水中に生育する多年草。
稈は細長く水中を這い,葉は水面に浮遊するか立ち上がり,ときに沈水状態でも生育。花期は5月から7月。(参考:1994「日本水草図鑑」,文一総合出版)
ヒメウキガヤは,神奈川県レッドデータ生物調査報告書(神奈川県立生命の星・地球博物館1995)において絶滅危惧種(En-E)にランク付けされています。

釜利谷地区の「ホトケドジョウ」の生息状況

 釜利谷地区のホトケドジョウにつきましては、平成11年8月から生息確認調査を開始し、以来毎年生息を確認しております。

「ホトケドジョウ」

ホトケドジョウのイメージ画像

ホトケドジョウ(ドジョウ科ホトケドジョウ属)
青森県と中国地方西部を除く本州,および四国東部に分布し、水田・湖沼などにすむ。産卵期は3月下旬から6月上旬である。1年で4~5㎝(オス)ないし5~6㎝(メス)となる。
(参照:1980「原色日本淡水魚図鑑」((株)保育社))

注目すべき種の一部移植実験

 横浜市環境影響評価審査会から頂いた意見(カントウカンアオイなどの注目すべき種の移植及び郷土種を中心とした植栽など適切な対応を実施すること)を踏まえ、注目すべき種の保全を図るため移植を実施することとしており、平成17年度は一部個体を対象とした移植実験を実施しております。

 移植に関しては、専門家を加えた横環南自然環境検討委員会での検討結果を踏まえ、根系を傷めないようにブロック状に土ごと採取する手法を採用しています。

  • 移植実施時期:平成17年10月下旬~平成17年11月上旬
  • 移植後の注目すべき種
サイハイランのイメージ画像
エビネのイメージ画像
  • 移植作業の内容
移植作業の内容のイメージ画像