あたりまえの毎日を止めないために 高速道路の安全を支える道路管制センターの使命

あたりまえの毎日を止めないために
高速道路の安全を支える道路管制センターの使命

2026/04/01

高速道路のそばには、24時間365日交通の流れを見守る「道路管制センター」という場所があるのをご存じですか?

今回は、国内最大規模を誇るNEXCO東日本関東支社の道路管制センターにて、交通管制員を務める染谷 孔明さんへ取材。年間約10万件もの異常事象に対応する道路管制センターの、知られざる業務やテクノロジーに迫ります。

また、毎日の交通を“止めない”ことで豊かな暮らしを動かし続けている、いわば司令塔である染谷さんが、日々現場で感じている想いや展望についても詳しく伺いました。

株式会社ネクスコ・パトロール関東  道路管制センター 交通管制員 染谷 孔明(そめや こうめい)さん
株式会社ネクスコ・パトロール関東 道路管制センター 交通管制員
染谷そめや孔明こうめいさん

2018年4月に入社。高崎事業所に配属され、交通管理隊(パトロール隊)として現場業務に従事。
2023年1月、道路管制センターへ異動し、交通管制員として勤務。

目次 

年間約10万件もの異常事象を解決する、道路管制センターのネットワークとテクノロジー

高速道路における道路管制センターとは、どのような施設なのでしょうか?

染谷さん
染谷さん
染谷

道路管制センターは24時間365日休みなく高速道路の状況を監視し、お客さまの安全・安心を守っている施設です。

高速道路上で事故や落下物などの異常事象が発生した場合は、すぐに情報を集約のうえ、パトロール隊や警察、消防と適切に連携し、情報板やSNSなどでもお客さまに発信しつつ、迅速な事態の収束に努めています。状況によっては、復旧工事やレッカーに至るまで、幅広い手配業務も臨機応変に対応しています。

いわゆる“黄パト”と呼ばれる現場のパトロール隊が高速道路の「目」であるならば、管制センターはその情報を集約して判断を下す「頭脳」。両者が緊密に連携することで、高速道路の安全を守っています。

具体的には、どのようなケースへの対応が多いのでしょうか?

染谷さん
染谷

落下物の対応は日常茶飯事ですね。特に風が強い日は、トラックの荷台に掛けてあるシートが飛んでいってしまうんです。それを見かけたお客さまから、高速道路にある非常電話や道路緊急ダイヤル(#9910)でよく連絡をいただきます。その電話の相手がまさしく私たち交通管制員です。

あの電話はみなさんにつながっていたんですね。ちなみに、何名体制で監視しているのですか?

管制室
染谷さん
染谷

基本的には管制員12名と連絡員2名、管制司令と呼ばれるリーダー2名の体制です。管制員は3名ずつの4チームで構成され、協力しながら一つひとつの事象を的確に判断していきます。

道路管制センターを実際に見せてもらいましたが、まさに「司令室」といった印象の場所でした! 当社にはこのような管制センターが4カ所ありますが、地域ごとに違いはありますか?

染谷さん
染谷

北海道、東北、新潟、関東の4つの支社それぞれに、設置されています。業務内容に大きな違いがあるわけではないものの、エリアによって特性は異なりますね。例えば、雪の多い地域はスキーシーズンとそれ以外の季節で交通量に大きな差がありますが、関東は常に混雑しているので異常事象も多発しやすいです。

改めて、関東支社の道路管制センターの規模について教えてください。

染谷さん
染谷

関東支社の道路管制センターは、20道路・約1,400kmを管理する国内最大級の管制施設です。関東支社管轄の道路における通行台数は、NEXCO東日本の管轄エリア全体の約7割を占めることから、異常が発生する頻度も段違いに多く、年間約10万件・1日あたり約300件の事象に対応しています。

管制室
染谷さん
染谷

なお、関東支社の道路管制センターは2016年、全面的にリニューアルされました。耐震性向上や防火機能強化のほか、災害時に備えたヘリポートや、全国の道路管制センターのなかでも最大規模となる高さ5.5m×横幅17mもの大型ディスプレイが新たに設置されています。

本当にダイナミックなディスプレイですよね! たくさんの情報が映し出されています。

染谷さん
染谷

ディスプレイには、路線図や各所のカメラ映像、渋滞や事故の情報などが一元的に表示されています。広大な関東エリアの交通状況を俯瞰しつつ、状況に応じて映像の固定表示も可能。より的確で迅速な管制業務ができるようになりました。

ほかにも、染谷さんが業務で感じる便利なテクノロジーはありますか?

染谷さん
染谷

交通管制員として非常に助けられているのが、デジタル無線とGPSを活用した車両位置管理システムです。

これによって、NEXCO東日本の管理するパトロールカーや雪氷対策作業車両の位置がすべてリアルタイムで把握でき、異常事象の発生時、どこの車両が一番早く現場に向かえるかを瞬時に判断して指示を出せるようになりました。

以前は、無線による情報のやり取りだけで多くの時間を要していましたが、システムの進化によって大幅に工数が削減され、本来の管制業務に集中できるようになっています。

人力からデジタルへ、管制業務も進化していくのですね。今後もアップデートされるのでしょうか。

染谷さん
染谷

はい、2026年度下半期より東北道の一部区間にて、「次世代高速道路」の実現に向けた実証実験が始まる予定です。以前からデジタル化が進んできたといっても、現状はまだまだ、異常事象の検知を人による通報に頼ってしまっている状態。

異常事象検知の自動化
染谷さん
染谷

NEXCO東日本が目指すのは、異常事象検知の自動化です。落下物や異常事象などの道路情報を迅速に収集する「多機能ポール」など、テクノロジーを活かした管制業務を実現していきたいと考えています。

現場を経て憧れの交通管制員へ やりがいを感じるのは「処理完了」と書き込む瞬間

染谷さんはなぜ、交通管制員というお仕事を選ばれたのでしょうか。

染谷さん
染谷さん
染谷

入社時からずっと憧れていたからです! 司令室のような場所で、各所と情報をやり取りしながら的確な指示を出す姿が、やっぱり純粋にカッコいいじゃないですか。

直球ですね! たしかにドラマのワンシーンのようで、すごくカッコいいです。

染谷さん
染谷

そうなんです。ただ、道路管制センターで働くためにはまず現場を知る必要があるため、最初はパトロール隊を経験しました。その後、念願叶ってこの場所へ。憧れていた仕事ができて、毎日楽しいです。

夢が叶って何よりです! 一方で、交通管制員は緊迫感のあるお仕事ですし、大変な日もあったんじゃないですか……?

染谷さん
染谷

そうですね。異動して1年も経たない頃の、とある雪の日は忘れられません。その日は予報より早く雪が降り、通行止めを実施し始めたのですが、まだ走行していたお客さまの車がスタックしたり、事故になったり……、バタバタと1時間に20件もの異常事象が発生してしまったのです。

次から次へと鳴り響く電話や無線に対応しながら、限られた数のパトロールカーをどこに向かわせるべきか、優先順位の判断を迫られました。思わず慌てそうな状況ですが、道路管制センターの判断ミスは命に関わります。周囲の管制員と相談しながら、落ち着いて一つひとつ対応していきました。

つまり、3分に1件のペース……想像を絶します。対応の優先順位はどのように決めていくのですか?

染谷さん
染谷

「次の事故をいかに防ぐか」が最大の判断基準です。まずは路肩より車線上の事象に対処します。また、落下物は事故を引き起こすリスクが非常に高いので、状況に応じて、落下物の処理を優先的にパトロール隊に依頼していますね。

たしかに。事態を大きくしないことが大切なんですね。事故の場合、どんなことを聞いていくのですか?

染谷さん
染谷さん
染谷

第一に怪我の有無です。そのうえで、車両が通れるか否か、車両を動かすことができる状態なのか、などをヒアリングしていきますね。

そんなとき、非常電話で接するお客さまは、パニックになっている場合もあるかと思います。話す時に心がけていることはありますか?

染谷さん
染谷

まずは「大丈夫ですよ」「お怪我はないですか?」と安心していただくような声掛けを徹底しています。どんなにお客さまが焦っていても、私たちは落ち着いて応対することが大切です。

常に冷静でいることが求められる交通管制員の業務ですが、このお仕事の「やりがい」や、染谷さんを動かす「原動力」は何でしょう。

報告書を書く様子
報告書は現在、紙からタブレットへの記入に移行しています
染谷さん
染谷

一番の達成感を感じるのは、事故や渋滞への対応が一区切りつき、報告書の最後に「処理完了」という文字を書き込む瞬間です。この「処理完了」というのは、すべての対応を終え、これ以上お客さまへの危険がないことを確認した記録となります。

それまで緊迫していた現場が無事に平穏を取り戻し、車両が元通りに動き出すのを見るとホッとします。日々当たり前に動いている交通や暮らしを止めず、支えていく。その使命感こそが、私の原動力です。

最後に、高速道路を利用される読者の方へ交通管制員として伝えたいことはありますか?

管制室
染谷さん
染谷

「家に帰るまでが遠足」という言葉がありますが、レジャーの行き帰りで高速道路を利用されるときも同様です。せっかくの楽しいお出かけが、事故や故障で台無しになってしまってはもったいないですよね。

特に、長期休暇やゴールデンウイークは久々に運転される方も多く、事故の起きやすいシーズン。ぜひ安全運転を心掛けていただき、素敵な思い出を作っていただけたらうれしいです!

まとめ

管制室で働く染谷さん

高速道路の車がスムーズに流れ続ける日常の裏で、広大なネットワークの情報を一手に引き受け、1分1秒を争う判断をミスなく下し続ける道路管制センター。

今この瞬間も、交通と豊かな暮らしを動かし続けている道路管制センターはまさに、「高速道路の頭脳」と言えるでしょう。

安全運転が一番ですが、万が一事故や落下物に遭遇してしまった際は、落ち着いて道路緊急ダイヤル(#9910)へ連絡を。交通管制員が冷静かつ迅速に、そして温かく、あなたの安全と安心を守ります。