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持続可能な社会の実現に向け、NEXCO東日本グループが目指す未来

代表取締役社長 小畠 徹の写真

(右)東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 小畠 徹

(左)株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー 村上 芽 氏
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援や気候変動リスクと金融などが専門。近著に「図解SDGs入門」(日本経済新聞出版)

 新型コロナウイルス感染症の蔓延、頻発・激甚化する自然災害、脱炭素社会に向けたエネルギー転換、ICT・AI・5Gといったデジタル技術の進展など、国内外の社会経済情勢が大きく変化するなかで、NEXCO東日本では新たな中期経営計画をとりまとめ、本年4月に公表しました。その狙いと背景、描き出す未来像について、日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャーの村上 芽氏と当社代表取締役社長の小畠 徹が対談しました。

新たに始動した中期経営計画

小畠 2021~2025年度を対象とした中期経営計画は、3つの視点から策定しました。
 一つ目は、私どもNEXCO東日本が“本質的にもっている力は何か”を見つめ直す視点です。二つ目は、例えば高速道路建設のように1~2年で完成しないものも多いので、足元からの継続性、つまり今着手する事業をどう継続、発展させるかという視点です。三つ目は、10年後の世界を見越して、そこから現在に振り返ってどう進むべきかというバックキャスティングの視点です。中期経営計画が終了する2025年は、SDGs達成期限までの中継地点といえますが、「そのときにどうなっておくべきか、そのためには今何を準備すべきか」を熟慮し、策定しました。

村上 なるほど。日本の企業は海外の企業に比べて、変化に対して消極的だという印象をもっていましたが、御社のように自社が本来なすべきことと将来の経営環境の変化の両面をバランスよく見つめると、それらの変化を積極的に受け止め、事業に生かせますね。

小畠 グループ社員が変化に敏感になり、柔軟に対応する意識が高まるよう私自身が率先垂範していかなくてはなりません。
 社会インフラを支える企業として当社には、社会に貢献したいという強い思いをもった社員が多くいますが、日々の業務に邁進する中で、携わる業務の目的や意義をどうしても見失ってしまうことがあります。あらためて、当社の立ち位置と方向性を見つめ、自分たちの事業そのものが社会に貢献するのだ、という誇りをもって仕事に臨んで欲しい。そういった思いで、この中期経営計画を作りました。

村上 今回のコロナ禍では、社会の動きや経済活動が停滞し、そこはかとない不安を感じていた人々が多いなかで、ネット通販などで注文した商品は確実に届くという点で安心感がありました。そのことは高速道路をはじめとしたインフラがしっかりと機能し、物流が止まらなかったおかげであり、御社のような企業の社会的意義をあらためて実感した人が多かったのではないでしょうか。

小畠 ありがとうございます。この後は、中期経営計画の具体的な中身をご紹介しましょう。

インフラ老朽化や災害対策でもイノベーションを

小畠 はじめに、高速道路事業の安全・安心面についてですが、特にインフラの老朽化対策に注力してまいります。高速道路のなかには、完成から40~50年経過している道路があり、今後もこの割合は増えていきます。また、当社は、北海道、東北、新潟など比較的雪が多いエリアを管轄しているため、凍結防止剤の散布で道路が傷みやすいという特徴もあります。そこで橋梁やトンネルなどの構造物の大規模更新・修繕を行う「高速道路リニューアルプロジェクト」を進めています。あわせて、大規模地震の発生に備え、橋梁の耐震補強工事も行っているところです。
 また、土木構造物の点検・調査から補修までの業務を高度化・効率化するため、点検時に高解像度カメラを活用したり、AIを含むロボティクスを駆使して保全計画を立案するなどのスマートメンテナンスハイウェイも2020年から本格始動しています。
 安全・安心という点では、休憩施設の防災拠点化にも取り組んでいます。将来予想される首都直下型地震に備え関係機関が災害救助活動を効率的に行えるよう、首都圏4カ所の休憩施設に自家発電設備、ヘリポート、警察・消防・自衛隊などが合同で使える災害対策室などを整備しています。

村上 もしものときに、ここが防災拠点になるのだと分かることは大切ですね。

小畠 東日本大震災では、高速道路は緊急輸送路として被災地支援に貢献したほか、大津波襲来時には防波堤や緊急避難場所として地域住民の命を守るための役割も果たしました。今後も、災害発生時には、「命の道」として被災地の救援、復興に貢献してまいります。

村上 東日本大震災の経験から得られた知見を十分に活かしておられますね。

脱炭素社会の実現に向けての貢献も

小畠 現在、自動車の自動運転技術の開発が進んでいます。その変化に対応すべく関連企業や学識経験者のご意見を伺い、「自動運転社会の実現を加速させる次世代高速道路の目指す姿」と題した構想を本年4月に取りまとめました。
 高速道路の場合、ハンズフリー、アイズフリーなど、様々な自動運転レベルの車両が、高速走行の状態で混在するわけですから、自動運転への対応は容易ではありません。しかし、トラックドライバーの高齢化、担い手不足などの社会的な課題を解決するためには、自動運転のような技術で物流の効率化が進むのは必然の流れだと考えます。

村上 脱炭素社会に向けた取組みはいかがでしょうか。

小畠 これも大きく分けて3つの側面で貢献できると考えております。「私たち自身による貢献」、「お客さまの取組みを支援することによる貢献」、「高速道路整備を通じた貢献」の3つです。
 まず、「私たち自身による貢献」としては、高速道路ののり面の樹林化やそこで発生した間伐材・剪定枝、刈草などを利用したバイオマスガス化発電が代表例です。また、本年1月に2050年ゼロエミッションの達成に向け、社内の「環境行動指針」を改訂し、3月に国際規格である「ISO14001認証」を本社として取得しました。
 次に、「お客さまの取組みを支援することによる貢献」というのは、例えば次世代自動車の普及への対応などです。電気自動車の急速充電器の設置や燃料電池車のための水素ステーションの整備、また、将来的には走行しながらの給電が可能な走行レーンの整備も考えています。

村上 高速道路には、いろいろな潜在的な可能性があり、未来社会が楽しみですね。

小畠 最後の「高速道路整備を通じた貢献」では、ネットワーク機能の強化があります。そもそも高速道路には、一般道路の渋滞を軽減し、燃費を向上させて社会全体のCO2を削減させる機能があるとされています。その削減効果の定量化はなかなか難しいのですが、例えば、現在の圏央道開通区間の完成により年間約39万tのCO2削減効果があったとの試算があります。ネットワーク機能の強化や4車線化による渋滞緩和がCO2削減にも寄与している側面があることを、広く知ってもらいたいです。

村上 正確に計算して定量化するのは簡単ではないとは思いますが、完璧な試算でなくても、区間ごとや、渋滞緩和の取組み単位での削減効果が具体的に分かると、御社の事業をより深く理解する人が増えると思います。

小畠 さらに、高速道路がネットワーク化されていると、事故や災害が起きた時に、迂回して目的地に行くことができます。圏央道は一部未開通の区間がありますが、概ね環状ルートが形成されています。すると、首都圏の渋滞が減り、物流がスムーズになるなどの効果もあります。このように多面的にメリットのあるネットワーク整備を早期に進めたいと思っております。

村上 現在、各企業は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、サプライチェーンやバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を計算しています。それ自体はよいことですが、個別に数値を算出しているため、全体像が分かりにくいと感じています。その点、御社のような公共性の高い企業がリードして発信していただくと、全体でどうなのかというイメージがつかみやすいため、取組みに期待が寄せられるのではないでしょうか。

日本で、海外で、人・モノ・地域をつなぐ

村上 国際協力もされているとうかがっております。

小畠 インドに社員を派遣し、高速道路のグランドデザインやマネジメント、メンテナンスなどの技術の輸出指導を行っています。また、インドやミャンマーなどから研修生を受け入れ、技術者の育成に取り組んでおり、コロナ禍前は、年間100人前後が研修に来ていました。

村上 インドの農村では、冷蔵技術がないため市場に流通できず廃棄される野菜が多いそうです。食品が傷む前に出荷・運搬できるような方法が確立されれば、流通する食品が増えます。高速道路はこうしたことの実現の一翼を担うと思いますし、さらにネットワークでつながればインド国内全土に流通しやすくなると思います。また、御社から学んだ人材が国中に散らばっていくことで、人的なネットワークもできるでしょうね。
 ところで、人材の話が出ましたが、御社における将来の担い手確保や技術継承のため、次世代技術者の育成で大切に考えていることはありますでしょうか。

小畠 やはり高速道路の現場での経験が一番大切だと考えています。現場ごとに異なる状況に対応する中で蓄積された経験と知識が、他の現場でも活きることに繋がります。しかし、近年は高速道路の新設事業が減少しており、不足しがちな現場経験を補完するため、2020年3月、「NEXCO東日本総合技術センター」を開設し、体験型研修も受けられる体制を整えました。ここで十分に時間をかけて経験を積み、国内だけに留まらず、ゆくゆくは海外でも活躍する力を身につけて欲しいと思っています。

村上 道路構造物の点検業務の高度化・効率化を進めていらっしゃるというお話でしたが、そういう新しい技術もこちらで学ばれるのですね。

小畠 そのとおりです。
 “人”への貢献という意味で、最後に地域貢献の話をしたいと思います。当社グループ経営ビジョンの中にある「『つなぐ』価値の創造」という言葉にも込められているとおり、当社は、地域の方々とのつながりを大切にして事業を行っています。また、高速道路事業を活かした取組みにも力を入れているところです。現在は、コロナ禍により思うように活動できておりませんが、学校や福祉施設での交通安全教室の実施や休憩施設などでの地域連携イベントの開催、また、企画割引「ドラ割」の充実などによる観光振興なども行っており、引き続き、地域との連携を強化していきたいと考えています。

村上 冒頭のお話にあった、本質的な役割を見つめ直し、バックキャスティングで考えるという方針が、計画全体を貫いていると感じましたし、自動運転社会の実現に向けても、インフラ面の準備を推し進める独自の役割がおありだと分かりました。また、道路はインフラの根幹ですが、どのように使われるかで、環境や社会に大きな影響を及ぼすのだとも感じました。

小畠 本日の対談で、当社にとっては本業を通じたSDGs達成への貢献が重要であることをあらためて認識しました。2030年の達成期限まで残された時間には限りがありますが、当社の強みを活かしてどう貢献できるか、何をなすべきかについて、さらに考えを深めてまいりたいと思います。

当社代表取締役社長の小畠 徹の写真
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャーの村上 芽氏の写真