特集
東日本大震災発生から10年の復興支援の歩み
2011年3月11日14時46分に発生した三陸沖を震源としたマグニチュード9.0の地震によりNEXCO東日本が管理する高速道路も大きな被害を受けました。高速道路上の最大計測震度は6.3を観測し、東北道(川口JCT〜青森IC間)をはじめ東北支社および関東支社が管理する高速道路約2,300kmが通行止めとなりました(左図参照)。また、高速道路の被害は20路線約870kmの区間にも及びました。
未曾有の被害をもたらした東日本大震災発生から10年が経過する中で、被災地域の復興を支援するため、NEXCO東日本グループが取り組んできた歩みを振り返ります。
震災からの復旧
通行止め解除への経緯
NEXCO東日本グループ一丸となり復旧工事に取り組み、震災発生から約20時間後の3月12日11時には緊急交通路を確保し、被災地域への物資の輸送などが可能となりました。
また、13日後の3月24日には一般の車両も通行できる状態に応急復旧するなど被災地を救う「命の道」として貢献しました。
本復旧までの経緯
2011年9月からは順次、被害箇所の本復旧工事を実施し、2012年12月までにすべての区間での工事を完了しました。これにより、高速道路が本来有する機能を震災前の状態に戻し、高速道路の機能を最大限に発揮することができるようになりました。
3段階の復旧作業
盛土の復旧
常磐自動車道(上り線)92.5kp付近
路面の復旧
東北自動車道(下り線)274.6kp付近
本復旧箇所 | 東北道、常磐道ほか 15路線 109IC間 |
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本復旧内容 | 舗装633km、橋梁234橋、のり面61km、 通信幹線422km、防護柵79km ほか |
復興に向け整備が進んだ高速道路
復興に向け常磐道全線開通へ
東日本大震災後、福島第一原子力発電所の事故発生に伴い、広野IC〜南相馬IC間は整備工事を中断していましたが、環境省による除染作業の完了に伴い、2013年6月末より、常磐富岡IC〜南相馬IC間においても復旧・整備工事を進め、浪江IC〜南相馬IC間、相馬IC〜山元IC間を2014年12月6日、常磐富岡IC〜浪江IC間を2015年3月1日に開通させました。
この開通により、常磐自動車道(約352km)が全線開通し、東北自動車道の災害時などの緊急時における代替ルートの構築とともに、沿線における企業立地の増加や観光地の来客数の増加、交流人口の拡大など、様々な方面で効果が発揮されています。
地域活性化IC・スマートICのさらなる整備
全線開通に続き、復興への支援、除染・中間貯蔵施設事業の加速などを目的とし、2019年3月に大熊IC、ならはスマートIC、2020年3月には常磐双葉ICを開通させました。
高線量区域内の復旧・整備工事
震災当時、福島第一原子力発電所の事故発生に伴い高線量区域内となった区間では、復旧・整備工事にあたって現場作業における安全管理を徹底して行いました。環境省による除染作業後に本格的に工事を再開しましたが、作業員は「除染電離則」などを遵守し、放射線に関する特別教育を受講しました。また、帰還困難区域への立入りについては、現場内の区域境に検問所を設け、立入りを厳重に管理するとともに、作業後のスクリーニング(汚染検査)および線量計による放射線量の確認を行い、個人の被ばく線量を管理することに加え、必要な健康診断(電離健康診断)を行って、安全を確保したうえで、工事を進めました。
4車線化などへの取組み
2車線区間で渋滞による速度低下や対面区間での事故発生の状況を踏まえ、2016年3月に、いわき中央IC〜広野IC間の約27kmと、山元IC〜岩沼IC間の約13.7kmの4車線化および広野IC〜山元IC間の付加車線設置(約13.7km)が事業化され、2021年6月までに上記区間の4車線化および付加車線設置事業がすべて完了しました。
現在は、相馬IC〜新地IC間の4車線化事業および浪江IC〜南相馬IC間の付加車線設置事業を進めており、引き続き一日も早い完成に向け努めてまいります。
常磐道4車線化工事
阿武隈大橋の例
大久川橋の例
震災復興リーディングプロジェクトへの参画(事業促進PPP)
2012年6月から三陸沿岸道路の一部の工区(気仙沼唐桑工区)で国土交通省より受注していた事業促進PPP*業務は、当社が担当した区間の全線開通に伴い2020年度末をもって終了しました。
当社は、測量・調査・設計および工事などの業務に対する指導・調整、地元および関係行政機関などとの協議、施工監理などを実施し、三陸沿岸地域における震災復興に貢献することができました。
- 事業促進PPP(Public Private Partnership:官民連携)
通常、発注者が行っている協議、調整などの施工前段階の業務を民間技術者チームが発注者と官民一体となって実施する業務で、官民双方の技術・経験を活かしながら効率的なマネジメントを行うことにより、事業の促進を図るものです。
【PPP受注区間の開通】
2019年3月21日 | 唐桑小原木IC〜陸前高田長部IC間開通 (当該業務担当区間:唐桑小原木ICより県境まで) |
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2020年2月24日 | 気仙沼中央IC〜気仙沼港IC間開通 |
2021年3月6日 | 気仙沼港IC〜唐桑半島IC間開通 |
災害対応力の強化
休憩施設の防災拠点化
東日本大震災では、高速道路の休憩施設が救助・救急・医療活動や復旧活動のために全国から集まった自衛隊や消防などの集結拠点や中継拠点として活用されましたが、停電や燃料不足、情報通信手段の断絶など、万全な後方支援を行う環境が整備されていなかったことが課題となりました。
そのため、災害発生時に関係機関が災害救助活動を効果的に行うことができるよう、自家発電設備や井戸などのライフラインのバックアップや、共同の災害対策室として活用できる機能を備え、防災機能を強化した休憩施設を2014年、常磐道の守谷SA(上り線)にモデルケースとして整備しました。
現在では、各地に同様の機能を有した休憩施設として、東北道の蓮田SA(上り線)、関越道の高坂SA(上り線)、東関東道の酒々井PA(上り線)を整備し、大規模災害発生時に機能できるよう備えています。
防災拠点機能を備えたSAの例(蓮田SA(上り線))
関係機関との連携強化
災害への対応はハード面のみならずソフト面での備えも欠かせません。NEXCO東日本グループでは、大規模災害発生時に緊急交通路を確保し、被災地の救急救命活動や復旧復興活動などに貢献するため、自衛隊、消防庁、警察、DMATならびに各インフラ事業者との合同訓練などを行い、関係機関との連携を図っています。
津波避難階段の設置
東日本大震災の際、宮城県沿岸部と並行する仙台東部道路の盛土部は、周辺住民の方などに津波からの避難先として利用されました。このことから、津波発生時に避難する高台などがない沿岸部周辺においては、地元行政機関などと連携したうえ、高速道路の盛土部のり面を津波避難階段として提供し、地域の防災訓練などにも協力しています。
地域への貢献
震災発生時
被災地域への支援
NEXCO東日本グループは、東日本大震災で被災した地域への積極的な支援も行いました。
震災発生後、SA・PAを営業しているテナントと一体となり、高速道路内においてお客さまを対象とした飲食物の配布などを行ったほか、被災地に開設された避難所に出向き、温かい飲食物の提供を行うことで、不安に苛まれる被災地の方々の不安を和らげるなどの活動に取り組みました。
その他にも、緊急支援物資の被災自治体への提供や災害ボランティアセンターの開設に協力を行ったことに加え、NEXCO東日本グループの維持管理業務ノウハウや機動力などを結集し、被災地域の道路および排水溝の清掃、がれき処理など、グループ一体となって被災地域の復興支援に取り組みました。
復興・創生期
観光振興のための企画割引の実施
震災からの復興期には、東北復興支援の一環として、東北復興観光支援パスを販売し、多くのお客さまに高速道路をご利用いただきました。
現在も、東北6県が定額で乗り降りできる商品を販売するなど、東北各地の観光振興に貢献しています。
当社主催イベントの企画
当社では、東日本大震災以前から、東北6県の観光・文化・食などを一堂に集め、イベントでPRすることによって、多くのお客さまに東北地域の魅力に興味を持っていただき、東北6県の地域間の交流を活性化させるとともに、高速道路の利活用促進を目指すものとして「ハイウェイフェスタとうほく」を開催していましたが、震災以降は復興の願いも込めた取組みとして地域の魅力発信にも努めてまいりました。
新型コロナウイルス蔓延により昨年度は中止となりましたが、オンライン形式という新たな形でイベント「おうちフェスタとうほく」を企画しました。今後は、「ハイウェイフェスタとうほく」との連動やコンテンツの充実を図ります。
地域イベント、キャンペーンへの協賛
東日本大震災の鎮魂と復興を願い、2011年から始まった「東北絆まつり(旧:東北六魂祭)」に協賛・参加し、被災地の復興や地域の活性化に貢献してまいりました。
また、震災10年の節目に2021年4月から始まった東北デスティネーションキャンペーンでも、「TOHOKUサポーター」として当キャンペーンと連携しています。